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【次世代農業】
次世代農業の“芽”第7回 農産物サプライチェーンの変化対応にビジネスチャンス

2018年02月27日 山本大介


 昨年、規制改革推進会議では農水産物の流通網のあり方について、卸売市場法の抜本的見直しを含めた提言をまとめました。提言では、現在の農水産物流通を巡る環境の変化について「産直取引、契約栽培、直売所、ネット通販などの取引形態による多様な販路を通じて生産者から最終需要者のもとに農産物が届けられており、卸売市場は生産者にとっての一つの選択肢として相対化されている」と整理し、商物一致の取引原則など卸売市場流通独特のルールについても見直していくべきものとされています。日本における農産物の生産・流通は農協と卸売市場というビッグプレーヤーによって確立された仕組みがあり、それ以外の生産・流通網はいわばアウトサイダー的位置づけとされてきましたが、今後は対等かそれ以上の存在感を持つようになっていくと思われます。

 卸売市場が変化を迫られる一方、生産に関しても意欲的な生産者による農地集約と生産性の高い農業経営への移行が進んでいます。農林水産省のデータでは1人当たり農地面積は近年急増し30年前に比べ2倍以上となりました。生産者(農業就業人口)の減少による供給不安が喧伝されることもありますが、現在は持続性のある生産者への集約の過程であるともいえ、生産体制・方法、加工体制、流通網まで含めた農産物サプライチェーン全体がモデルチェンジしている真っ只中にあると考えるのが妥当です。こうした時代においては、生産者や流通業者自身もそうですが、それに関わってサービスや商品を提供してきた組織・企業も変革を迫られます。

 例えば上で挙げた旧来のビッグプレーヤーである農協は、上部組織から各地域の単位農協に至るまで自己改革計画を推進しています。自ら主体的に経営を進めるプロ農家の育成や、農業生産コスト削減など、これまでの農協にとって収入源であった部分にも切り込む取り組みです。自己改革に伴い県単位での合併協議も次々に開始されています。自己改革は本来農産物サプライチェーンの変化への対応策を含めた組織的な戦略の策定・推進のためのものです。加工や物流拠点の再配置・先端技術の導入といった施策はわかりやすい例でしょう。合併によって出荷単位がまとまることで規格や品質の標準化が進み、大口の実需者との契約的取引が拡大する可能性もあります。農協の合併というと拠点の統廃合など、ややもすると生産者にとってサービスレベル低下が懸念されるようなイメージが先行することもあり、合意形成や意思決定に時間を要することが想定されます。巨大組織故の難しさですが、パイロット的な取り組みを別組織として切り出すなど、経営の速度を高めていくことは必須です。

 農産物サプライチェーンの変化は、差別化を志向する生産者や流通業者に対する新技術や新たなプラットフォームの提案が受け入れられやすくなるということでもあります。農協や卸売市場の外でIoTを活用して生産~加工~流通~小売までを一貫して管理する仕組みを持つグループも生まれるでしょうし、農協や卸売市場がこれまでと違ったプレーヤーとの連携・合弁に取り組むことも増えるでしょう。今後は、こうしたサプライチェーングループ間での競争も激しくなっていくと予想されます。そうした競争下では当然ながら、費用対効果に優れた投資を行ったプレーヤー達が勝ち残ることになります。生産者や流通業者にサービス・商品を提供する企業としては、ターゲットから投資を引き出せるような現実的かつ有効性が認識できる提案によってビジネスチャンスが拡大していくと言えます。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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